映画『俺たちフィギュアスケーター』を見ていると、「ウィル・フェレルは本当に自分でスケートをしているの?」と気になる人も多いでしょう。普通に滑る場面だけでなく、スピンやジャンプ、男子同士の大胆なペア技まで登場するため、どこまで本人なのか見分けにくい作品です。
結論からいうと、ウィル・フェレル本人も実際にスケートを練習して撮影していますが、高度な技まで本人だけで行ったわけではありません。プロのスケートダブル、ワイヤー、CGによる顔の置き換えなどを組み合わせています。本人がどこまで滑れるようになったのか、代役は誰なのか、映像が自然に見える仕組みまで整理します。
『俺たちフィギュアスケーター』ウィル・フェレルのスケートは本人なのか

『俺たちフィギュアスケーター』(原題:Blades of Glory)でチャズ・マイケル・マイケルズを演じたウィル・フェレルは、撮影のために実際にフィギュアスケートを習っています。そのため、「スケート場面はすべて代役」という理解は正確ではありません。
ただし、映画に登場する競技レベルのジャンプやスピン、スピードのある演技まで、すべてフェレル本人がこなしているわけでもありません。作品では本人の演技とプロスケーターによる代役、視覚効果を巧みに組み合わせています。
ウィル・フェレルは撮影前までほとんど滑れなかった
映画を見ると、フェレルが以前からスケート経験者だったようにも見えます。しかし本人は『Blades of Glory』について語ったインタビューで、本格的な経験はほぼなかったと説明しています。
子どもの頃にリンクへ行った経験はあったものの、当時はリンクの端につかまりながら滑る程度だったと振り返っています。つまり、チャズ役を演じることが決まってから、大人になって本格的なトレーニングを始めたことになります。
フィギュアスケートは、単に前へ進めれば映画の選手役として成立するわけではありません。氷上で姿勢を崩さず、セリフや表情の芝居をしながら、プロ選手らしい雰囲気も出す必要があります。フェレルにとっては、笑いを取る演技以前に「スケーターらしく見えるところまで上達する」こと自体が大きな課題でした。
本人が滑っているからこそ自然につながる場面もある
もしスケート場面を最初から最後までプロの代役だけで撮影すれば、俳優の顔が映るたびにカットを切り替える必要があります。すると、会話から滑走へ移る瞬間や、フェレル独特の大げさな動きが途切れて見えやすくなります。
本人が基本的な滑走を身につけていたことで、演技をしながらリンクを動く場面を撮影しやすくなりました。特にチャズは、技術的に美しいだけの選手ではなく、荒々しく派手なキャラクターです。プロのスケートだけを入れるより、フェレル自身の体の使い方が残ることでキャラクターらしさも出ています。
ジャンプや難しいスピンまで本人というわけではない
一方、競技スケーターが長期間かけて身につけるジャンプや高速スピンを、映画撮影の準備期間だけで俳優が安全に習得するのは現実的ではありません。しかもフェレルはスケート初心者からのスタートでした。
米国フィギュアスケート協会が紹介した振付師サラ・カワハラの回顧によると、フェレルには複数のスケートダブルが用意されていました。難度の高い演技では、こうしたプロの技術を利用しています。
「ウィル・フェレル本人が滑った」は正しいものの、「映画に映るチャズの技をすべて本人がやった」は違う、と考えるのが最も実態に近いです。
ウィル・フェレルはどれくらいスケートを練習した?

驚くのは、単に撮影直前に数回レッスンを受けた程度ではないことです。ウィル・フェレルはスケートコーチから長期間指導を受け、リンク上で選手役を演じられる水準までトレーニングしています。
コーチのスーザン・オースティンから長期間指導を受けた
フェレルの指導を担当したのは、フィギュアスケートコーチのスーザン・オースティンです。米国フィギュアスケートの「SKATING」誌に掲載されたインタビューでは、オースティンはフェレルを1日3時間ほど、約6か月にわたって指導したと振り返っています。
2026年に公開された本作の制作関係者による回顧でも、週5日、1日3時間ほどトレーニングした時期があったことが語られています。資料によって期間の表現には多少の違いがありますが、数日間の付け焼き刃ではなく、かなりまとまった時間をスケート練習へ費やしたことは共通しています。
映画で数秒しか使われない動作であっても、俳優が氷の上で自然に立ち、進み、止まり、芝居をするためには基礎練習が欠かせません。本作のスケート場面が単純な合成映像に見えにくい理由の一つです。
最初は支えてもらわなければならないほどだった
オースティンによると、トレーニングを始めた頃のフェレルは、しばらく人に支えてもらう必要がある状態だったといいます。特に後ろ向きに進みながら足を交差させるバッククロスオーバーでは苦労し、サラ・カワハラも加わって支えた時期があったとされています。
フィギュアスケート経験者から見ると基礎的な動きでも、成人の初心者にとっては簡単ではありません。通常の地面と違って摩擦が小さく、ブレードのエッジを使って体重を移動させる必要があるためです。
それでも最終的にはバッククロスオーバーを身につけ、後ろ向きに滑るところまで上達しています。映画のためとはいえ、フェレルが実際にかなりの練習を積んだことがわかります。
プロのように見せることとプロの技をすることは別
ここは『俺たちフィギュアスケーター』を見るうえで重要なポイントです。映画に必要なのは、主演俳優を本物の競技選手へ育てることではありません。本人の顔が見える場面で違和感なく滑り、難しい部分をプロのダブルへ自然につなぐことが目的です。
フェレルが基礎を習得したことで、チャズ特有の腕の振り方や姿勢、芝居を伴う滑走を本人が表現できます。その動きをスケートダブル側も研究し、難しい技へつなげれば、観客からは一人の選手が連続して滑っているように見えます。
ウィル・フェレルの代役は誰?スケートダブルとCGの仕組み

フェレルができない高度なスケートを補ったのが、競技経験を持つスケートダブルです。単純に後ろ姿だけを代役へ変更したわけではなく、当時としてはかなり手の込んだ視覚効果も利用されています。
中心となったスケートダブルはチャド・ブレナン
ウィル・フェレルの主要なスケートダブルを務めた人物として確認できるのがチャド・ブレナンです。ブレナンは競技フィギュアスケートの経験を持ち、所属クラブのプロフィールでも『Blades of Glory』におけるフェレルの主要スケートダブルだったことが記載されています。
制作現場では、単に「プロらしく美しく滑ってください」と求められたわけではありません。チャズというキャラクターは、クラシカルで上品なスケーターではなく、ロックミュージシャンのような荒々しさを売りにしています。
ブレナンは後年の回顧で、フェレルの横を滑りながらストロークなどの動きをまねたと語っています。長年バレエやフィギュアスケートを経験したプロにとって、むしろ「優雅すぎないようにする」ことが難しかったという点が興味深いところです。
フェレルには1人ではなく複数のダブルが使われた
「ウィル・フェレルの代役=チャド・ブレナン1人」と考えると少し単純すぎます。サラ・カワハラが米国フィギュアスケート協会に語った内容では、フェレルには合計4人のスケートダブルが使われたとされています。
身長や体格が俳優に近いことに加え、撮影する技や動きに応じて適したスケーターが必要になります。さらに本作では、ペア技やアクロバティックな演出もあるため、一人ですべてを担当するより複数の専門家を使うほうが安全で映像の完成度も高められます。
| 映像の内容 | 主に使われた方法 |
|---|---|
| 基本的な滑走や芝居 | ウィル・フェレル本人も実施 |
| 難度の高いジャンプ・スピン | プロのスケートダブルを活用 |
| 代役なのに本人の顔が見える場面 | CGによる顔・頭部の置き換え |
| 大きく空中へ飛ぶ演出など | ワイヤーなどの撮影技術を併用 |
代役の体にウィル・フェレルの顔を合成していた
本作で特徴的なのが、スケートダブルが高度な技をしている映像へ、俳優の顔をデジタル処理で組み合わせたことです。映像制作専門メディアによる当時の取材では、視覚効果チームがフェレルやジョン・ヘダーの顔を高精度に記録し、ダブルの映像へ組み込む技術を開発したことが紹介されています。
ダブルは俳優に近い髪型のウィッグも装着していたため、多くのショットでは顔や首周辺を中心に置き換えることができました。これによって、「難しいジャンプをして着氷した瞬間に急に本人のアップへ切り替わる」という昔ながらの撮影方法に頼らず、一続きの映像として見せやすくなっています。
つまり、画面にウィル・フェレルの顔がはっきり映っているからといって、そのカットで体まで必ず本人とは限りません。ここが『俺たちフィギュアスケーター』のスケート場面を見分けにくくしている最大の理由です。
ワイヤーも使われている
映画後半には、通常のフィギュアスケートを超えた派手な空中アクションも登場します。フェレルとヘダーは公開当時のインタビューで、飛行するようなシーンではワイヤーを使用したことを明かしています。
したがって本作のスケート映像は「本人か代役か」という二択ではありません。本人の実際の滑走、プロスケーター、CGによる顔の置き換え、ワイヤーなどが場面ごとに組み合わされています。
ジョン・ヘダーも本人が滑った?ウィル・フェレルとの違い

フェレルとペアを組むジミー・マッケルロイ役のジョン・ヘダーも、撮影のためにスケートを練習しています。ただし、二人の上達のしかたには違いがあったようです。
ジョン・ヘダーはスケートへの適応が比較的早かった
振付を担当したサラ・カワハラは、後年の米国フィギュアスケート協会の記事で、ヘダーは氷への適応がよく、自然にスケートを覚えていったと振り返っています。それに対してフェレルは苦戦したものの、非常に努力していたと説明しています。
映画でも、ヘダー演じるジミーは繊細で優雅な正統派スケーター、フェレル演じるチャズは豪快で力強いスケーターという設定です。俳優本人の動きの違いも、結果として二人のキャラクター性と相性がよかったと見ることができます。
ヘダーも高度なジャンプやスピンは代役を使っている
ヘダー自身も当時のインタビューで、可能な限り自分で滑った一方、格好いいスピンやジャンプにはダブルがいたと説明しています。したがって、ジミーについても「本人が全部滑った」というわけではありません。
カワハラによると、ヘダーにも複数のスケートダブルが用意されていました。フェレルと同様、本人の演技とプロの高度な技を組み合わせてキャラクターを作っています。
練習中には足首を負傷している
ヘダーは撮影準備中、スピンの練習で足首にひびが入るけがをしています。当時の報道では、しばらく氷上練習ができなくなり、制作側が撮影スケジュールを心配するほどの出来事だったとされています。
このエピソードからも、出演者が単なる演技指導として軽くスケートを体験していたのではなく、実際の氷上で技術を身につけようとしていたことがわかります。同時に、経験の浅い俳優が高度な技を無理に担当せず、専門のダブルへ任せる必要性もよくわかります。
映画に出てくる本物のフィギュアスケーターは本人出演

「スケートは本人?」という疑問にはもう一つ意味があります。『俺たちフィギュアスケーター』には、現実のフィギュアスケート界で活躍した有名選手が多数登場しているからです。こちらは実際の選手本人によるカメオ出演です。
オリンピック級の有名スケーターが多数登場する
作品にはスコット・ハミルトン、ナンシー・ケリガン、ブライアン・ボイタノ、ドロシー・ハミル、ペギー・フレミング、サーシャ・コーエンなど、フィギュアスケートファンなら知っている選手たちが登場します。
スコット・ハミルトンは競技を伝える人物として出演し、ブライアン・ボイタノ、ドロシー・ハミル、ペギー・フレミングは審査側の役として登場しています。ナンシー・ケリガンやサーシャ・コーエンにも見せ場があります。
| 人物 | フィギュアスケート界での代表的な実績 |
|---|---|
| スコット・ハミルトン | 1984年サラエボ冬季五輪男子シングル金メダリスト |
| ブライアン・ボイタノ | 1988年カルガリー冬季五輪男子シングル金メダリスト |
| ドロシー・ハミル | 1976年インスブルック冬季五輪女子シングル金メダリスト |
| ペギー・フレミング | 1968年グルノーブル冬季五輪女子シングル金メダリスト |
| ナンシー・ケリガン | 1994年リレハンメル冬季五輪女子シングル銀メダリスト |
| サーシャ・コーエン | 2006年トリノ冬季五輪女子シングル銀メダリスト |
フィギュアスケート界の協力が作品の説得力を高めている
本作は競技フィギュアスケートを大胆にパロディ化したコメディですが、制作そのものはスケート経験者の協力をかなり受けています。サラ・カワハラのような一流の振付師に加え、競技経験を持つダブルや実在の名選手が参加しました。
そのため、設定や技は意図的に大げさでも、滑りそのものには本物のフィギュアスケートらしいスピードや姿勢が残っています。単に俳優へスケート靴を履かせてコメディを撮った作品ではありません。
本物の選手たちも作品のジョークを受け入れていた
フィギュアスケートをかなり派手に茶化した映画なので、「選手側から怒られなかったのか」と気になるところです。フェレルは当時のインタビューで、出演したスケーターや関係者からはむしろ好意的に受け入れられたと話しています。
ブライアン・ボイタノも後年、フェレルが実際にスケートを経験して、その難しさを強く実感していたことを振り返っています。パロディではあるものの、競技の難しさを知らずに外側から笑いものにした作品とは少し違います。
どの場面がウィル・フェレル本人なのか見分けられる?

映画を見直すと「ここは本人」「ここから代役」と確認したくなります。しかし、本作では顔のCG置き換えまで行われているため、画面だけから確実に判定するのは簡単ではありません。
単純に顔が見えるかどうかでは判断できない
昔のスポーツ映画では、難しい技になった瞬間に後ろ姿へ切り替わったり、顔が見えない遠景だけ代役になったりすることがあります。しかし『俺たちフィギュアスケーター』では、ダブルの体へ俳優の顔を合成できました。
そのため、全身が映っていてフェレルの顔まで確認できる場面でも、必ずしも本人がその技を行っているとは限りません。この撮影方法こそ、公開から時間がたっても「ウィル・フェレルは本当に滑ったのか」と疑問を持つ人が多い理由でしょう。
高度な技ほどダブルや特殊撮影の可能性が高い
見分ける際の大まかな目安として、自然な前後の滑走、比較的ゆっくりした動き、セリフを伴う氷上の芝居などは本人が参加できる範囲です。一方、高速スピンやジャンプ、競技経験が必要な連続技、大きな空中演出については、ダブルやワイヤー、視覚効果が使われていると考えるほうが自然です。
ただし、これは公開されている制作情報から判断できる一般的な目安であり、すべてのショットについて公式な内訳が発表されているわけではありません。「この1秒は絶対に本人」と映像だけで断定するのは避けたほうがよいでしょう。
ダブルがフェレルの滑り方をまねていたことにも注目
特に面白いのは、「俳優がプロスケーターのように見せる」だけでなく、「プロスケーター側も俳優のように見せていた」ことです。チャド・ブレナンは、フェレルの滑走を横で見ながら、ストロークや体の使い方を合わせていました。
フェレル本人の少し荒々しい滑りから、突然クラシックバレエのように洗練されたプロの動きへ変われば、代役だと気づきやすくなります。そのため技術的に上手なダブルが、あえてチャズらしい力強さや不器用さを残して演じる必要がありました。
本作の自然さは、CGだけではなく「代役がウィル・フェレルのキャラクターを演じている」ことによって成立しています。ここを知ってから見ると、単純なスタントの置き換え以上に手間のかかった映画だとわかります。
『俺たちフィギュアスケーター』のスケートが妙にリアルに見える理由

作品自体はあり得ない技や下ネタを盛り込んだコメディですが、氷上の映像には妙な説得力があります。その理由は、本物の技術を見せることとコメディ俳優の演技を残すことを、どちらか一方に絞らなかったからです。
俳優本人に最低限以上のスケート能力を身につけさせた
まず、主演俳優自身が実際に練習しています。フェレルがまったく滑れない状態のままなら、氷上の芝居はほぼ代役任せとなり、顔のアップとスケート映像を細かく切り替えなければなりません。
長期間のトレーニングによって本人がある程度自由に動けるようになったため、芝居と滑走を一つのシーンの中でつなげられました。チャズが得意げな表情で観客へアピールするようなコメディ部分では、本人が動けること自体に大きな価値があります。
プロには「上手に滑る」以外の演技まで求めた
難しい技を担当するダブルには、競技スケーターとしての能力だけでなく、主演俳優のキャラクターを再現する能力も必要でした。通常なら美点になる優雅さを抑え、チャズの荒々しさへ寄せなければならない場面もあります。
これはスポーツ映画で見落とされやすいポイントです。代役が本人より明らかに上手すぎると、技の瞬間だけ別人に見えてしまいます。本作ではフェレルの動きへダブルを近づけることで、その落差を小さくしています。
顔の置き換えによってカメラの自由度を上げた
さらにCGによる顔の置き換えがあるため、カメラは「代役の顔を絶対に映してはいけない」という制約からある程度解放されます。プロのスピード感を保ったまま全身を映し、その後もチャズの表情を見せられるのが大きな利点です。
現在の映像技術と比べれば2007年当時のCGには時代を感じる部分もありますが、「俳優の演技を保ちながら、プロスケーターの身体能力を一つのキャラクターへ統合する」という狙いは明確です。
『俺たちフィギュアスケーター』ウィル・フェレルのスケート本人説まとめ
『俺たちフィギュアスケーター』で、ウィル・フェレルは実際にスケートを練習し、本人も氷上で滑っています。撮影前はほぼ初心者でしたが、コーチのスーザン・オースティンらから長期間指導を受け、後ろ向きの滑走なども身につけました。
ただし、高速スピンやジャンプなど映画に登場する高度な技をすべて本人が行ったわけではありません。チャド・ブレナンを中心とした複数のスケートダブルが参加し、場面によってCGによる顔の置き換えやワイヤーも使用されています。
結論は「ウィル・フェレル本人も本当に滑っている。ただし、プロ級の見せ場は代役と特殊撮影を組み合わせている」です。さらにジョン・ヘダーも実際にスケートを習得しており、スコット・ハミルトンやナンシー・ケリガン、ブライアン・ボイタノ、サーシャ・コーエンなど、本物のフィギュアスケーターも本人役などで出演しています。こうした本物の技術と映画的な仕掛けの組み合わせが、荒唐無稽なコメディでありながらスケート場面には意外なリアリティがある理由です。



