映画『密輸1970』を見て、「海女役の俳優たちは水中シーンで本当に潜っているの?」「あの激しい海中アクションも本人が演じたの?」と気になった人は多いのではないでしょうか。結論からいうと、キム・ヘスやヨム・ジョンアをはじめとする海女役の俳優たちは、実際に水へ入り、多くの場面で自ら素潜りや水中アクションを行っています。
ただし、映画の水中シーンすべてを実際の海で撮影したわけではなく、中心となったのは水深約6メートルの大型水槽です。代役や水中ワイヤー、VFXも必要に応じて使われています。この記事では、出演者がどこまで本当に潜ったのか、水中撮影の方法、3カ月に及ぶ訓練、サメや海底の映像がどのように作られたのかを整理します。
『密輸1970』の海女は水中シーンで本当に潜った?結論は「本人が実際に潜って撮影」

『密輸1970』の水中シーンは、俳優の顔だけを合成して海女に見せているわけではありません。海女役の出演者たちは実際に水へ入り、素潜りしながら演技しています。
キム・ヘスやヨム・ジョンアは実際に水中で演技している
チュンジャ役のキム・ヘス、ジンスク役のヨム・ジョンアをはじめ、海女役の俳優たちは水中撮影に参加しました。特にクライマックスでは、ただ泳ぐだけではなく、潜る、方向転換する、相手と戦う、小道具を扱うといった複雑な動きまで求められています。
日本公開時に公開されたメイキング映像でも、周囲のスタッフが酸素ボンベなどの装備を身につける一方、海女役の出演者が海女の衣装とゴーグルに近い状態で何度も水中へ入っている様子が確認されています。
「俳優本人は水に入らず、すべてスタントやCGで作った」という撮影ではありません。映画で感じる身体の重さや浮力、水中で髪や衣装が揺れる自然な動きには、本人が実際に水中で演技していることが大きく影響しています。
撮影場所は実際の海ではなく水深約6メートルの大型水槽が中心
「本当に潜った」と聞くと、俳優たちが沖合の海へ出て何メートルも潜ったように想像するかもしれません。しかし、重要な水中シーンの多くは、海の環境を再現した大型水槽で撮影されています。
リュ・スンワン監督への日本でのインタビューなどによると、水中撮影のために水深約6メートルの巨大な水槽セットが用意されました。美術、アクション、視覚効果の各チームが連携し、海底の岩や水中の景観まで作り込んでいます。
大型水槽を使えば、実際の海よりも水温や透明度、照明、カメラ位置、安全管理をコントロールしやすくなります。激しい水中アクションを何度も撮影する本作にとって、単に迫力だけでなく安全性と再現性を確保するためにも重要な方法だったと考えられます。
ただし「水中シーンの100%が本人」という意味ではない
本人が実際に潜ったことは事実ですが、「映画に映るすべての水中カットを俳優本人だけで撮影した」と考えるのは正確ではありません。
ヨム・ジョンアは韓国メディアのインタビューで、水中アクションを含め監督から求められたことには積極的に挑戦した一方、代役を使用した場面もあったことを明かしています。
水中映画では、俳優の表情が必要なカットと、高度な泳ぎや危険性の高い動きを見せるカットでは撮影条件が異なります。安全面を考えれば、必要な部分で専門スタッフや代役を使うのは自然な制作方法です。
海女役の俳優たちは撮影前に水中訓練を受けていた

水深6メートルの水槽へ入り、カメラの前で自然な海女の動きを見せることは、通常の泳ぎとは大きく異なります。そのため制作側は、撮影前から水中演技のための訓練を行いました。
ヨム・ジョンアは息止めから始めて6メートルまで潜れるようになった
ジンスクを演じたヨム・ジョンアは、もともと水泳が得意な状態で撮影に入ったわけではありません。韓国の聯合ニュースのインタビューでは、海女たちのリーダーを演じる以上、自分が水中で一番しっかりしていなければならないと考え、熱心に訓練したことを語っています。
練習は最初から6メートルまで潜るようなものではありませんでした。まず息を止める練習を行い、次に水深1メートル、2メートルと段階的に深くし、最終的には6メートルまで潜れるようになったとしています。
映画を見ると海女たちが簡単に海底へ降りているように感じますが、その自然さは最初からできたものではありません。水への恐怖を減らし、浮力に逆らって沈む感覚や、息を止めながら演技する感覚を少しずつ身につけた結果です。
海女役チームは約3カ月にわたって水中訓練を行った
日本公開時のメイキング紹介では、出演者が専門家の指導を受けながら約3カ月の水中訓練を行ったことが紹介されています。指導にはアーティスティックスイミングの韓国代表経験を持つキム・ヒジンコーチが参加しました。
一般的な水泳指導だけではなく、映画で必要となる「水中で美しく見える動き」「カメラに対して身体をどう向けるか」「浮きすぎず沈みすぎず動く方法」なども重要になります。リュ・スンワン監督は、水中アクションを考える際にアーティスティックスイミングの技術を取り入れる発想に至ったと説明しています。
その結果、海女たちは単にバタバタ泳ぐのではなく、地上の格闘とは異なる上下左右を使った独特のアクションを見せられるようになりました。
キム・ヘスは水中撮影に強い恐怖を抱えていた
特に大きな挑戦になったのが、チュンジャ役のキム・ヘスです。彼女は以前から泳げなかったわけではなく、もともとは水にも慣れていたと語っています。
しかし、2012年の映画『10人の泥棒たち』で、手錠をした状態のまま車が水中へ沈むシーンを撮影した際、強い恐怖と呼吸困難に襲われました。後になってパニック状態だったと理解し、その経験以降は水中撮影に大きな不安を持つようになったと複数のインタビューで説明しています。
そのため、『密輸1970』のように海女役として水中へ入る作品は、キム・ヘスにとってかなり高いハードルでした。
仲間の撮影を見たことがキム・ヘスの恐怖克服につながった
キム・ヘスが水への恐怖を乗り越えるうえで大きかったのは、共演者たちの存在だったようです。リハーサルで海女役の俳優が一人ずつ水へ入り、訓練してきた成果を見せる姿に刺激を受け、自分の緊張も徐々に解けていったと振り返っています。
最初は身体を少しずつ水に入れ、異変があればすぐ撮影を止められる状態で進められました。その後は水の中で以前のような自由さを感じられるほどになり、実際の水中シーンを撮影できるまでになっています。
この背景を知ったうえで映画を見ると、チュンジャが水中を自在に動く姿には、役柄としての演技だけでなく、俳優自身が恐怖を乗り越えた過程も重なって見えます。
『密輸1970』の水中シーンはどうやって撮影されたのか

『密輸1970』の海中映像がリアルに見える理由は、単純に俳優が潜ったからだけではありません。水槽、美術、アクション設計、水中ワイヤー、VFXなどを組み合わせることで、映画としての海中世界を作っています。
水深6メートルの水槽に海底の環境を再現した
重要な水中撮影では、水深約6メートルの大型水槽が使われました。俳優が実際に潜れるだけの深さがあるため、海面から海底へ降りていく動きや、上下方向を大きく使ったアクションを撮影できます。
実際の海の場合、天候が変われば波や水中の明るさも変化します。海水が濁れば撮影そのものが難しくなり、同じ動きを何度も再現することも簡単ではありません。
水槽であれば、照明やカメラ、水中スタッフの配置を計画しやすくなります。見た目は海でも、映画制作の現場としては俳優の安全を確認しながら繰り返し撮影できる環境になっていたわけです。
水中ワイヤーも使用されている
韓国で公開された本作のプロダクション情報では、約3カ月の訓練とともに水中ワイヤーを活用したことが紹介されています。
水中では浮力が働くため、地上のアクションとは身体の動かし方が大きく変わります。逆に、その特徴を利用すれば、人物が上下左右へ滑るように移動する独特の映像を作ることもできます。
水中ワイヤーを使うことは、「俳優が潜っていない」という意味ではありません。俳優が実際に水中へ入りながら、映画として狙った位置や動きを作るための撮影技術と考えるとわかりやすいでしょう。
美術・アクション・VFXを組み合わせて「海」に見せている
制作には美術チーム、アクションチームだけでなく視覚効果チームも加わっています。水槽で撮影された映像を、そのまま何も加工せず映画に使用しているわけではありません。
水中の色、背景の奥行き、海底の雰囲気などを整えることで、スタジオの水槽ではなく本物の海中にいるような印象が生まれます。つまり、『密輸1970』のリアリティは「実写かCGか」という二択ではなく、俳優による実際の水中演技を土台に、映画技術で完成度を高めたものです。
| 要素 | 撮影・制作方法 |
|---|---|
| 海女の泳ぎ・潜水 | 俳優本人が実際に水へ入り、多くの場面を撮影 |
| 水中撮影の主な環境 | 水深約6メートルの大型水槽 |
| 水中アクション | 本人の演技、専門指導、水中ワイヤーなどを組み合わせる |
| 危険性・難易度の高いカット | 必要に応じて代役などを使用 |
| 海底の見た目 | 美術セットと視覚効果などで海中環境を構築 |
| サメ | CGによる表現 |
サメも本物?CGや代役が使われた部分との違い

水中映像が非常にリアルなため、クライマックスに登場するサメまで本物なのか気になるところですが、ここは俳優の素潜りとは事情が異なります。
映画に登場するサメはCG
海中で海女たちに迫るサメは、本物のサメと俳優を一緒に泳がせて撮影したものではありません。リュ・スンワン監督への韓国メディアのインタビューでも、サメはCGであることが説明されています。
本物のサメを使わなくても、俳優自身が本当の水中で動いているため、身体や衣装、髪にかかる水の抵抗は実物です。そこへCGのサメを組み合わせることで、完全なCG空間よりも生々しい映像に仕上げやすくなります。
サメの存在まで含めてすべて実写だと考える必要はありませんが、逆に「サメがCGだから水中シーンも全部CG」と考えるのも違います。
ヨム・ジョンアは代役を使った場面があると明かしている
韓国の聯合ニュースによるインタビューでは、ヨム・ジョンアは代役が担当した場面もあったとしながら、自身も水中アクションを含め多くの撮影に挑戦したと話しています。
一方、キム・ヘスについて扱った韓国の記事では、海女役の出演者たちが水中コーチの指導のもと、高難度の水中アクションを含む多くの場面を直接演じたことが紹介されています。
情報を合わせて考えると、海女役の俳優本人による撮影が作品の大きな柱になっているものの、必要な場面では代役や補助技術を使用したという理解が最も実態に近いでしょう。
「実際に潜った」と「本物の海女と同じ条件」は違う
俳優が息を止め、本当に水中へ潜ったこと自体は確認できます。しかし、だからといって現役の海女とまったく同じ環境で潜水したわけではありません。
海女は潮の流れ、水温、波、視界などが変化する自然の海で仕事をします。映画撮影では、水槽の周囲に専門スタッフがおり、安全を確認しながらカットごとに撮影できます。
俳優たちの挑戦が大きなものであることと、本職の海女の潜水技術が長年の経験による高度な技能であることは分けて考える必要があります。
なぜ『密輸1970』の水中シーンはこれほど本物らしく見えるのか

水槽撮影やCGを使っているにもかかわらず、『密輸1970』の海中シーンには独特の生々しさがあります。そこには、本物の水の中で演技することを重視したリュ・スンワン監督の考え方があります。
俳優本人の身体が浮力を受けているから動きが自然
水中で人間が動くと、地上とは違って身体の向きを簡単に固定できません。足を蹴れば身体全体が反動を受け、服や髪も遅れて動きます。この複雑な動きをCGだけで完全に再現するには多くの作業が必要です。
『密輸1970』では、俳優が実際に水中へ入ることで、その物理的な動きそのものを映像に取り込んでいます。特に顔がはっきり見える状態で水中を移動する場面は、「本人がそこにいる」と感じさせる重要な要素です。
海女という職業の説得力を出すため実際の海女からも学んだ
リュ・スンワン監督は、水中アクションを設計するにあたり、実際の海女から水中で起こり得ることや身体の動かし方について話を聞いたことを明かしています。
映画の海女たちはアクションヒーローとして訓練された人物ではなく、海で働き続けてきた女性たちという設定です。そのため、一般的な格闘映画のようなパンチやキックを水中へ持ち込むだけでは説得力がありません。
海に慣れた海女だからこそ、水中では地上の屈強な男性より自由に動ける。この設定をアクションそのものに落とし込んだことが、本作ならではの面白さになっています。
水中だから女性が男性と戦えるという発想がアクションの核
リュ・スンワン監督は、地上で体格差のある男性と女性を戦わせ、女性側が簡単に勝つ描写には違和感を持つ場合があると語っています。
しかし舞台が水中なら条件が変わります。海女たちは毎日のように海へ入り、悪党たちは水中で自由に動けません。筋力だけでは決まらず、水への慣れや息の使い方、身体の方向転換が大きな武器になります。
そのためクライマックスの水中戦は、単に珍しい場所で戦っているだけではありません。「海女だからこそ勝負できる場所」を選ぶことで、物語上の説得力とアクション映画としての爽快感を同時に成立させています。
水中の音も実際の音をそのまま使っているわけではない
映像が本物らしいと、音も水中で録音されたものをそのまま使っているように感じますが、映画の音響は観客に状況や緊張感を伝えるために設計されています。
実際の水中では、地上と同じように会話や物音がクリアに聞こえるわけではありません。『密輸1970』では効果音や音楽を組み合わせ、静けさと迫力を使い分けています。
映像についても同様で、「本物だけをそのまま記録する」のではなく、本物の水中演技を核にしながら映画として効果的に見えるよう調整しているのが特徴です。
『密輸1970』の水中撮影でよくある疑問

水中シーンについて特に間違えやすい点を整理すると、「本人が潜ったか」「海で撮ったか」「代役を使ったか」「CGを使ったか」はそれぞれ別の問題だとわかります。
キム・ヘスは本当に6メートルまで潜った?
キム・ヘスが水深約6メートルの水槽で水中撮影に参加したことは、本人のインタビューや制作関連の記事で確認できます。ただし、映画のすべてのカットで必ず水槽の底まで6メートル潜っているという意味ではありません。
水槽そのものの最大水深と、各カットで俳優が実際にいる深さは分けて考える必要があります。映画ではカメラ位置や背景によって、実際以上の深さを感じさせることもできます。
ヨム・ジョンアも泳げなかったのに本当に撮影できた?
ヨム・ジョンアは当初、水への恐怖があり泳ぎも得意ではなかったと語っています。それでも息止めから訓練を始め、水深1メートル、2メートル、最終的に6メートルへと段階的に練習しました。
短期間で海女のように見える動きを身につけられた背景には、本人の練習だけでなく、アーティスティックスイミング経験者を含む専門チームの指導があります。
水中アクションは全部スタントマン?
全部がスタントマンというわけではありません。本人たちが実際に潜り、水中アクションを行った場面が多数あります。
ただし、代役を使ったカットが存在することも出演者自身が認めています。したがって「全部本人」でも「全部スタント」でもなく、本人の水中演技を中心にしながら、安全や撮影上の必要に応じて代役を組み合わせた作品と見るのが適切です。
海中シーンは全部本物の海で撮った?
いいえ。海辺や船など実際のロケーションを使った映像はありますが、重要な水中アクションは水深約6メートルの大型水槽を中心に撮影されています。
水槽だから映像が「偽物」ということではありません。俳優は実際の水の中で泳いでおり、そこへ海底セット、照明、VFXなどを組み合わせて映画上の海を完成させています。
サメは本物?
サメはCGです。本物のサメと俳優が同じ水槽や海で撮影したわけではありません。
一方で、サメから逃げたり戦ったりする人物側の演技は実際の水中撮影を土台にしています。そのためCGの生物と実写の人物を組み合わせても、身体の動きには本物の水の抵抗が残り、説得力のある映像になっています。
結局のところ、『密輸1970』の水中シーンは「全部本物」か「全部CG」かで分ける作品ではありません。俳優が本当に水へ入り、実際に素潜りしながら演じた映像を中心に、水槽セット、代役、水中ワイヤー、VFXを組み合わせて完成させています。
『密輸1970』の海女は本当に潜ったが、映画技術も組み合わせて撮影されている
『密輸1970』の海女役の俳優たちは、本当に水中へ入って撮影しています。キム・ヘスやヨム・ジョンアらは専門家の指導を受け、水深約6メートルの大型水槽で素潜りや水中アクションに挑みました。
特にヨム・ジョンアは息止めから段階的に練習し、6メートルまで潜れるようになっています。キム・ヘスも過去の撮影で経験した水への強い恐怖を抱えながら、共演者やスタッフの支えを受けて実際の水中撮影を行いました。
一方で、すべてのカットが本人だけで撮られたわけではなく、必要に応じて代役や水中ワイヤー、VFXが使用されています。サメもCGです。つまり、俳優が本当に潜った実写映像を核にしながら、安全性と迫力を高める映画技術を組み合わせたのが『密輸1970』の水中シーンです。その撮影方法を知ってから見直すと、海女たちが水中を自在に動くクライマックスの凄さがより具体的に感じられるでしょう。



