アン・ハサウェイとレベル・ウィルソンが女詐欺師を演じる映画『ザ・ハッスル』を見て、「どこかで見たことがある」「元ネタやリメイク作品があるのでは?」と感じた人もいるのではないでしょうか。
『ザ・ハッスル』には明確なリメイク元があります。しかも、その作品にもさらに元となった映画があるため、少し関係がわかりにくくなっています。この記事では、『ザ・ハッスル』の直接的な元ネタと、さらにさかのぼったオリジナル作品を整理し、ストーリーや登場人物、ラストの違いまでわかりやすく説明します。
ザ・ハッスルの元ネタは『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』

結論からいうと、2019年の『ザ・ハッスル』の直接的なリメイク元は、1988年公開の『Dirty Rotten Scoundrels』です。日本では『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』というタイトルで公開されました。
1988年版では、マイケル・ケインとスティーヴ・マーティンがタイプの異なる2人の男性詐欺師を演じています。『ザ・ハッスル』では、この基本設定を男女逆転させ、アン・ハサウェイとレベル・ウィルソンが女性詐欺師を演じる形へ変更されました。
1988年版も1964年の『寝室ものがたり』のリメイク
『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』には、さらに元となった作品があります。それが1964年公開のアメリカ映画『Bedtime Story』で、日本では『寝室ものがたり』というタイトルで公開されました。
『寝室ものがたり』にはマーロン・ブランド、デヴィッド・ニーヴン、シャーリー・ジョーンズが出演しています。舞台は後の作品と同じく南フランスのリビエラで、性格も詐欺の手法も異なる2人の男が女性をめぐって争うという基本構造がすでに作られていました。
つまり、『ザ・ハッスル』だけを見ると1988年版の男女逆転リメイクですが、物語のルーツまでたどれば1964年版に行き着きます。
3作品の関係は「1964年版→1988年版→2019年版」
作品の関係を時系列で並べると、非常にわかりやすくなります。
| 公開年 | 作品 | 主な位置づけ |
|---|---|---|
| 1964年 | 『寝室ものがたり』 | 物語の原型となった作品 |
| 1988年 | 『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』 | 1964年版をリメイクし、展開やラストを再構築 |
| 2019年 | 『ザ・ハッスル』 | 1988年版をベースに主要人物を男女逆転して現代化 |
そのため、「ザ・ハッスルの元ネタは何?」という質問には、直接の元ネタなら1988年版、物語の大元なら1964年版と答えるのが最も正確です。
『ザ・ハッスル』と1988年のリメイク元はストーリーがかなり似ている

『ザ・ハッスル』は登場人物の性別や時代設定こそ変更されていますが、1988年版と比較すると物語の骨格はかなり忠実に受け継いでいます。「設定だけ借りた別作品」というより、主要な展開を現代向けに置き換えたリメイクと考えたほうが理解しやすいでしょう。
上流階級風の詐欺師と庶民派の詐欺師が対立する
1988年版のローレンスは、洗練された服装や話術を武器に、裕福な女性へ近づく一流の詐欺師です。一方のフレディは、その場の機転と勢いで相手をだます小規模な詐欺師として描かれます。
『ザ・ハッスル』でもこの対比はほぼ同じです。アン・ハサウェイ演じるジョセフィーヌは、豪邸を構えて計画的に男性をだます洗練された詐欺師です。対するレベル・ウィルソン演じるペニーは、親しみやすさや大胆な嘘を武器にする庶民派の詐欺師となっています。
男女が入れ替わっても、「エレガントで計算高いベテラン」と「荒っぽいが機転の利く新参者」という対立軸そのものは変わっていません。
縄張りをかけて勝負する流れも共通している
2人が同じ土地で詐欺を始めたことで、どちらがその場所に残るかを決める勝負へ発展する点も共通しています。舞台もフランス・リビエラの架空の町ボーモン・シュル・メールという設定が受け継がれています。
1988年版ではローレンスが自分の縄張りを守ろうとする一方、フレディも簡単には立ち去りません。そこで2人は、ある人物を相手に詐欺を成功させられるか競争することになります。
『ザ・ハッスル』でも、ジョセフィーヌとペニーの利害がぶつかった結果、標的となる人物から金を引き出せるかという勝負に発展します。登場人物を入れ替えながら、リメイク元の構造をそのまま利用している部分です。
「治療が必要」という詐欺も形を変えて登場する
1988年版を知っている人が『ザ・ハッスル』を見ると、特に既視感を覚えやすいのが治療をめぐるくだりです。
『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』では、フレディが歩けない人物を装い、高額な治療が必要だと標的へ訴えます。それに対してローレンスは、有名な医師シュラフハウゼンになりすまして勝負へ割り込みます。
『ザ・ハッスル』ではペニーが目が見えないと装い、ジョセフィーヌが治療できる医師として現れます。身体の設定は「歩けない」から「見えない」へ変更されていますが、一方が症状を偽り、もう一方が治療する医師になりすますという笑いの構造は非常に近いものです。
ザ・ハッスルと元ネタの大きな違いは男女を入れ替えたこと

ストーリーの骨格が似ている一方で、『ザ・ハッスル』には2019年版ならではの変更もあります。最もわかりやすいのが、主要人物の性別を入れ替えたことです。
男性詐欺師2人から女性詐欺師2人へ変更
1988年版では、マイケル・ケイン演じるローレンスとスティーヴ・マーティン演じるフレディという男性2人が主人公でした。2人とも女性へ近づき、恋愛感情や同情を利用して金をだまし取ろうとします。
『ザ・ハッスル』ではこの関係が逆転し、アン・ハサウェイ演じるジョセフィーヌとレベル・ウィルソン演じるペニーが、主に男性を相手に詐欺を仕掛けます。
単純に俳優を女性へ変更しただけではなく、「女性だから相手からどのように見られるか」「男性側の思い込みをどう利用するか」という要素が詐欺の方法へ組み込まれているのが2019年版の特徴です。
標的も女性から男性へ入れ替わった
1988年版で2人の勝負の標的となるのは、グレン・ヘドリー演じるジャネット・コルゲートです。当初は大金を持つ「石けん王」のような存在だと思われていましたが、実際には2人が想像していたような大富豪ではありませんでした。
これに対して『ザ・ハッスル』で狙われるのは、アレックス・シャープ演じるトーマス・ウェスターバーグです。現代らしく、若いテクノロジー業界の成功者として登場します。
1980年代に成立した「裕福な女性旅行者」という設定を、2010年代らしい「若いIT長者」へ置き換えたわけです。性別だけでなく、誰を現代社会の“金を持っていそうな人物”として描くかまで更新されている点が重要な違いです。
コメディの見せ方も現代向けになっている
1988年版はマイケル・ケインの上品な振る舞いと、スティーヴ・マーティンの大げさな身体表現の落差が笑いの中心です。特にフレディが演じる奇妙な人物や、ローレンスが冷静なまま相手を翻弄する場面には、2人のキャラクター性が強く出ています。
『ザ・ハッスル』では、アン・ハサウェイの芝居がかったアクセントや豪華な衣装と、レベル・ウィルソンの体当たり型のコメディを対比させています。この「上品な詐欺師と暴走する詐欺師」という構図自体も、1988年版から受け継いだものと見ることができます。
ただし、笑いの内容はより直接的で、2019年当時の観客に合わせた台詞や身体を使ったギャグへ変更されています。そのため、同じ筋書きでも作品全体のテンポや印象は異なります。
1964年の『寝室ものがたり』とは何が違うのか

『ザ・ハッスル』のルーツを理解するうえで見落とせないのが1964年版です。実は、1988年版は1964年版の設定をかなり受け継いでいる一方、現在この物語の特徴だと思われている重要な要素を新しく加えています。
ローレンスとフレディという名前は1964年版から存在する
1964年の『寝室ものがたり』にも、フレディ・ベンソンとローレンス・ジェイミソンという名前の人物が登場します。つまり、1988年版で有名になった2人の詐欺師は、そこで初めて生まれたキャラクターではありません。
デヴィッド・ニーヴン演じるローレンスは洗練された大物、マーロン・ブランド演じるフレディは小規模な詐欺を繰り返す男という構図もすでにあります。南フランスで2人が衝突し、女性を標的に勝負する流れも後の作品へつながっています。
その意味では、『ザ・ハッスル』で描かれる「格の違う2人の詐欺師による縄張り争い」というアイデアは、60年以上前から受け継がれてきたことになります。
1988年版は単なるコピーではなく物語を作り直している
1964年版と1988年版には似た場面が多くありますが、まったく同じ作品ではありません。1988年版では脚本の展開が整理され、2人の掛け合いがより前面に出されました。
賭け金についても、1964年版では2万5,000ドル、1988年版では5万ドルという違いがあります。ただし、金額そのものより重要なのは、2人が標的を奪い合いながら「どちらが本当に上の詐欺師なのか」を競う構造です。
そして最大の変更点はラストです。『ザ・ハッスル』の結末につながる仕掛けは、1964年版ではなく1988年版で大きく発展した部分です。
結末を比較すると『ザ・ハッスル』がどの作品をリメイクしたかよくわかる

ここからは3作品の結末に関わる内容を扱います。『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』や『寝室ものがたり』をこれから初めて見る予定の人は、ネタバレを知りたくない場合は注意してください。
1964年版は恋愛を軸にした結末
1964年版では、フレディとローレンスがジャネットを標的に勝負します。しかし、ジャネットが当初想像されていたような裕福な女性ではないことが判明し、フレディは彼女に本気で恋をするようになります。
最終的にフレディはジャネットと結婚したいと考え、ローレンスとの勝負から降ります。ローレンスはその土地に残り、フレディは別の道を選ぶという形です。
つまり1964年版は、詐欺師同士のゲームだけでなく恋愛喜劇としての性格が比較的強く、後の2作品で印象的な「実は標的のほうが一枚上だった」という結末ではありません。
1988年版で「標的こそ最強の詐欺師」というオチが加わった
1988年版では、ローレンスとフレディがジャネットをだまそうとしていたところ、最終的には自分たちのほうがだまされます。
一見すると純朴だったジャネットの正体は、「ジャッカル」と呼ばれる腕利きの詐欺師でした。ローレンスとフレディは自分たちが勝負を支配しているつもりでしたが、実際にはジャネットのほうがさらに上だったというわけです。
しかも物語はそこで終わらず、ジャネットが新たな裕福な標的を連れて戻ってきます。最終的には3人が協力して詐欺を始める形となり、敗北が新しいチームの誕生につながる爽快なオチになっています。
『ザ・ハッスル』のラストは1988年版をほぼ踏襲
『ザ・ハッスル』ではジョセフィーヌとペニーがトーマスを標的にします。しかし、最終的にだまされるのは2人のほうです。トーマス自身が「メデューサ」と呼ばれる詐欺師であり、2人から大金を奪っていたことが明らかになります。
その後、トーマスは別の詐欺を進めながら2人の前へ戻り、最終的には3人で組む流れになります。
つまり、「標的だと思っていた人物が実は最も優秀な詐欺師だった」「最後には3人が組む」というオチは1988年版から受け継がれたものです。この点を見ると、『ザ・ハッスル』が1964年版を直接作り直したのではなく、1988年版を主な土台としていることがよくわかります。
| 作品 | 最後に起きること |
|---|---|
| 『寝室ものがたり』 | フレディがジャネットへ本気で恋をし、勝負から降りる |
| 『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』 | ジャネットが実は凄腕の詐欺師で、最後は3人が組む |
| 『ザ・ハッスル』 | トーマスが実は凄腕の詐欺師で、最後は3人が組む |
ザ・ハッスルとリメイク元はどれから見るのがおすすめ?

3作品には共通する仕掛けが多いため、どの順番で見るかによって驚き方が変わります。特に1988年版と2019年版はラストまで似ているため、先に片方を見ると、もう片方の展開をかなり予想しやすくなります。
『ザ・ハッスル』を楽しめたなら1988年版がおすすめ
アン・ハサウェイとレベル・ウィルソンの掛け合いや、詐欺師同士が互いを出し抜こうとする展開が気に入った人には、『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』が最もおすすめです。
ストーリーが似ているため完全な新鮮さはありませんが、「この場面はここから来ていたのか」と比較しながら楽しめます。特にローレンス役のマイケル・ケインとフレディ役のスティーヴ・マーティンは性格の対比がはっきりしており、同じ脚本構造でも2019年版とは違ったテンポのコメディになっています。
元ネタを1本だけ確認したいのであれば、1964年版より先に1988年版を見るほうが『ザ・ハッスル』とのつながりを感じやすいでしょう。
物語の変化を楽しみたいなら公開順
リメイクによって物語がどのように変化したのかを知りたい人には、『寝室ものがたり』→『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』→『ザ・ハッスル』という公開順が向いています。
1964年版では恋愛喜劇として描かれていた物語が、1988年版で「詐欺師がさらに上の詐欺師にだまされる」というゲーム性の高い作品へ変化し、2019年版では男女を反転させながら現代的な設定へ置き換えられています。
単に「同じ映画を3回見る」というより、同じ基本アイデアが時代ごとにどう再解釈されたかを見る楽しみ方ができます。
ラストの驚きを重視するなら1988年版を先に見る方法もある
まだ『ザ・ハッスル』を見ておらず、どちらから見るか迷っている場合は、1988年版から見る選択肢もあります。『ザ・ハッスル』は大きな仕掛けまで1988年版を受け継いでいるため、両方を完全に予備知識なしで楽しむことはできません。
そのため、オリジナル性の高い仕掛けがどこで生まれたかを重視するなら、1988年版を先に見るのが自然です。一方、アン・ハサウェイやレベル・ウィルソンが目的なら、もちろん『ザ・ハッスル』から見ても問題ありません。
元ネタを1本だけ見るなら1988年版、物語の歴史まで知りたいなら1964年版から公開順に見ると違いがわかりやすいです。
『ザ・ハッスル』は丸ごと同じ?リメイクとして見るポイント

『ザ・ハッスル』は主要な展開が1988年版とよく似ているため、「単に男女を入れ替えただけなのでは」と感じる人がいるのも不思議ではありません。ただし、まったく変更がないわけではありません。
物語の骨格はかなり忠実に残されている
2人の詐欺師が南フランスで出会うこと、洗練されたベテランと庶民派の新参者という組み合わせ、縄張りをかけた勝負、身体的な問題を装った詐欺、もう一方が医師になりすます展開、そして標的の正体が覆るラストまで、1988年版との共通点は多くあります。
そのため、元作品を知っている人にとっては、ストーリーそのものより「どの役割がどの人物へ置き換えられたか」を見る映画という側面が強くなります。
一番大きな再解釈は「誰が誰をだますのか」
1988年版では男性2人が女性を標的にするため、恋愛感情を利用する男性詐欺師という構図になっています。2019年版では反対に、女性2人が男性の欲望や思い込みを利用して詐欺を行います。
ジョセフィーヌの豪華な衣装や身分を偽る手口、ペニーの親しみやすさを利用した手口などは、女性主人公へ変えたことで見せ方が変化した部分です。その意味では『ザ・ハッスル』は、新しい物語を作るよりも、既存の物語を別の立場から演じ直すことを重視したリメイクといえます。
評価が分かれやすい理由も元ネタとの近さにある
『ザ・ハッスル』単体で初めてこの物語を見る場合、詐欺師同士の競争や終盤のどんでん返しを素直に楽しみやすいでしょう。一方で、1988年版を先に見ている場合は、重要な展開や結末を予測できてしまいます。
リメイク作品では設定を大幅に変えて別の結末を用意する方法もありますが、『ザ・ハッスル』は物語の核心部分まで比較的忠実です。そのため、男女逆転や現代化を面白いと感じるか、それとも新しい展開が少ないと感じるかで印象が変わりやすい作品だと考えられます。
ザ・ハッスルの元ネタとリメイクの違いをまとめると
『ザ・ハッスル』の直接的な元ネタは、1988年の『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』です。さらにその1988年版は、1964年の『寝室ものがたり』をリメイクした作品なので、「1964年版→1988年版→2019年版」という3世代の関係になっています。
2019年版では男性詐欺師2人を女性詐欺師2人へ変更し、標的も女性から男性のIT長者へ入れ替えました。一方、タイプの違う詐欺師同士が縄張りを争う構図や、治療を利用した詐欺、標的だと思っていた人物に逆にだまされるラストなど、1988年版からそのまま受け継がれている要素も少なくありません。
特に重要なのは、現在の物語を象徴する「標的の正体が凄腕の詐欺師だった」というオチは1964年版とは異なり、1988年版で作られた要素だという点です。『ザ・ハッスル』との違いを比較したいなら1988年版、物語そのものの原点を知りたいなら1964年版まで見ると、リメイクによる変化をよりはっきり楽しめます。


