映画『ベストマン -シャイな花婿と壮大なる悪夢の2週間-』を見て、「花婿付添人って本当にいるの?」「知らない人をベストマンとして雇う仕事まで実在するの?」と気になった人も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、ベストマンやグルームズマンという花婿付添人は実在します。さらに、映画ほど一般的ではないものの、お金を払ってプロのグルームズマンを依頼できるサービスも実際に存在します。ただし、伝統的なベストマンと映画に登場する「友人を演じるプロ」は別物です。映画の設定と現実の結婚文化を分けながら、その仕事内容や現在のサービス事情をわかりやすく紹介します。
『ベストマン -シャイな花婿と壮大なる悪夢の2週間-』の花婿付添人の仕事は本当にある?

『ベストマン -シャイな花婿と壮大なる悪夢の2週間-』の原題は『The Wedding Ringer』。友達の少ない花婿ダグが、結婚式でベストマンや花婿付添人を用意するため、ケヴィン・ハート演じるジミーが経営する「Best Man, Inc.」に依頼するというコメディ映画です。
ソニー・ピクチャーズ公式サイトでも、ダグが「花婿の付き添い人を提供している『ベストマンInc』」へ依頼することが物語の中心として紹介されています。
ベストマンそのものは架空ではない
まず混同しやすいのが、「ベストマン」という言葉自体が映画のためにつくられたものではないか、という点です。ベストマンは実際の結婚式で使われている名称で、日本語では「花婿付添人の代表」「新郎側の介添人」などと説明できます。
英国国教会(Church of England)も、結婚式におけるベストマンについて、新郎が家族や親しい友人から選び、結婚前から当日まで新郎を支える役割として案内しています。
日本ブライダル文化振興協会の教材でも、アッシャーズを「花婿の付添人」、ベストマンをその「リーダー的存在」と説明しています。そのため、花婿の横に何人もの男性が同じようなスーツ姿で立っている映画の光景そのものは、単なるコメディ上の創作ではありません。
一般的なベストマンは「友人を演じる仕事」ではない
ただし、通常のベストマンは結婚式場から派遣されてくるスタッフではありません。新郎の兄弟、親友、親しい親族など、もともと新郎と信頼関係がある人が務めるのが基本です。
つまり「ベストマンという役割は本当にある」という答えと、「プロが偽の親友になって結婚式へ出席する仕事が一般的にある」という答えは分ける必要があります。前者は伝統的な結婚文化ですが、後者はかなり特殊な有料サービスです。
映画の設定は完全な空想から生まれたわけでもない
興味深いのは、『The Wedding Ringer』のアイデアが、監督・脚本を務めたジェレミー・ガレリック自身の結婚式にまつわる経験から発展したと語られていることです。
ComingSoonの撮影現場インタビューでは、ガレリックがそれほど親しくない男性の結婚式の一員として参加し、その場で新郎との思い出話をしながら「プロのベストマンを仕事にできるのでは」と考え、それが映画の着想につながった経緯が紹介されています。
実在していた巨大な「ベストマン派遣業界」を映画化したというより、現実にあるベストマン文化へ「もしこれをプロが代行したら?」という発想を加えた作品と考えるのが正確です。
そもそもベストマンとグルームズマンは何が違う?

映画を見るうえでわかりにくいのが、「ベストマン」と「グルームズマン」の違いです。どちらも新郎側の結婚式メンバーですが、一般にはベストマンが中心人物、その周囲を複数のグルームズマンが支える形になります。
| 名称 | 主な立場 | 一般的な人数 |
|---|---|---|
| ベストマン | 新郎側の付添人の代表。新郎の最も親しい友人や兄弟などが務める | 通常は1人 |
| グルームズマン | 新郎を支える複数の男性メンバー | 結婚式によって異なる |
| アッシャー | ゲストの案内や着席などを担当。グルームズマンと役割が重なる場合もある | 結婚式によって異なる |
ベストマンは新郎の「右腕」に近い
ベストマンは単に新郎の横に立って写真へ写るだけの存在ではありません。結婚式の準備から参加し、新郎が困ったときに最初に頼れる存在として動くことが期待されます。
英国国教会では、リハーサルへの参加、新郎が時間どおりに式場へ到着できるよう支えること、アッシャーと連携して当日の問題を解決することなどを伝統的な役割として挙げています。
日本の「友人代表スピーチ」「受付」「二次会幹事」などを一人の親友がまとめて担当し、さらに式中も新郎のそばにいる姿を想像すると、比較的イメージしやすいでしょう。
グルームズマンは新郎側のチーム
グルームズマンは複数人で新郎を支えるメンバーです。英語圏では、新婦側にブライズメイドが数人いれば、新郎側にも何人かのグルームズマンを置く結婚式があります。
結婚情報サイトGuides for Bridesでは、ベストマンを新郎の主要なサポート役、グルームズマンを新郎とベストマンを支援するメンバー、アッシャーをゲストの案内などを担当する役割として整理しています。
ただし、呼び方や分担は国、地域、宗派、家族の習慣によって違います。「グルームズマンなら必ずこの仕事をする」と法律のように決められているわけではありません。
映画で7人もの付添人が必要になった理由
映画のダグは単にベストマンが一人いないだけではありません。新婦側の人数との釣り合いなどから、ベストマンに加えて複数のグルームズマンまで必要になり、ジミーが急造チームを用意することになります。
ここは映画として大きく誇張された部分ですが、「新婦側のブライズメイドと新郎側のグルームズマンが並ぶ」という結婚式の形式自体は実際にあります。そのため、付添人が一人もいないことをダグが気にする設定にも、現実の結婚文化を背景にした意味があります。
ベストマンや花婿付添人は実際にどんな仕事をする?

ベストマンの仕事は結婚式当日だけに限られません。伝統的には結婚前の準備、式当日のサポート、披露宴でのスピーチなど幅広い役割があります。もっとも、現代ではカップルごとに必要な仕事だけをお願いするケースも珍しくありません。
結婚前は新郎を支え、イベントや準備を手伝う
結婚前には、衣装の準備、リハーサルへの参加、グルームズマンとの連絡調整などを行う場合があります。英米圏では、結婚前に新郎と男性の友人たちが集まるバチェラーパーティーやスタッグ・ドゥの企画をベストマンが担当することもあります。
ここで重要なのは、ベストマンが結婚式全体を仕切るウェディングプランナーではないことです。あくまでも「新郎側で困っていることを解決する人」に近く、会場との正式な契約や式全体の管理は別の専門スタッフが担当するケースが一般的です。
当日は時間管理や指輪など重要な役割も担う
結婚式当日は、新郎が時間どおりに準備できているかを確認したり、緊張している新郎を支えたり、ほかのグルームズマンと連携したりします。式の形式によっては結婚指輪を預かることもあります。
米国のエチケットに関する代表的な情報源であるEmily Post Instituteでも、ベストマンとグルームズマンには結婚式に関するさまざまな実務的役割が紹介されています。
映画では「友達のふりをすること」が仕事の中心に見えますが、本来のベストマンで重要なのは、新郎が安心して結婚式を迎えられるよう実務面と精神面の両方で支えることです。
披露宴ではベストマン・スピーチも大きな仕事
英米の結婚式を扱った映画やドラマで、男性が立ち上がって新郎との思い出をユーモラスに話す場面を見たことがある人もいるでしょう。これはベストマン・スピーチと呼ばれる代表的な役割です。
新郎との思い出、人物像、新郎新婦への祝福などを織り交ぜて話します。映画『ベストマン』でジミーの能力が発揮される場面の一つでもあり、「新郎を昔から知っている人物らしく振る舞えるか」が嘘を成立させる重要なポイントになります。
現実では本当の親友や兄弟が務めるからこそ本人しか知らない話ができます。プロが完全な友人として潜入する場合、この部分まで自然に演じるには大量の事前情報が必要になるため、映画の設定が難易度の高い仕事として描かれていることにも納得できます。
映画の「ベストマンInc.」は実在する会社なのか

映画に登場する「Best Man, Inc.」は作品内の会社です。Sony Picturesの英語版公式ページでも、ジミー・キャラハンがBest Man, Inc.のオーナー兼CEOとして紹介されていますが、これは映画の登場人物と設定についての説明です。
映画と同名の会社が実在するという話ではない
したがって、「『ベストマン』は実話で、実在するBest Man, Inc.を映画化した」という理解は適切ではありません。映画の会社名やジミー・キャラハンという人物は作品上の設定です。
一方で、ベストマンという実在の文化を土台にしているため、すべてが荒唐無稽に見えないところがこの映画のおもしろさでもあります。親しい友人が少ない人にとって、「結婚式で新郎側のメンバーをそろえなければならない」というプレッシャー自体は想像できる問題です。
映画公開当時は「こんな仕事があったら」という発想が強かった
監督のガレリックが語った制作背景を見ると、発想の出発点は既存の有名な職業を取材したことではなく、自分自身が結婚式へ参加した経験から「プロのベストマン」というアイデアを思いついたことでした。
その意味では、2015年公開の映画を見て「アメリカでは昔から普通にベストマン派遣会社があったのか」と考えるのは少し違います。伝統的なベストマンは昔から存在しますが、他人が有料で友人役まで演じるサービスは別の話だからです。
ところが現在は映画に近いサービスが実在する
ここがおもしろいところで、2026年現在では「プロのグルームズマン」を掲げる事業者を実際に確認できます。つまり映画公開時に奇抜に見えたアイデアが、少なくとも一部では現実のサービスとして成立しています。
ただし、存在することと一般的であることは同じではありません。美容師やウェディングプランナーのように結婚式で普通に利用される職業というより、特定の悩みを抱えた新郎向けのニッチなサービスと見るほうが実態に近いでしょう。
プロの花婿付添人を雇うサービスは現在本当に存在する

映画との最大の共通点を確認できるのが、米国で展開されているGroomsman For Hireです。公式サイトでは「Professional Wedding Groomsman Services」を掲げ、新郎向けにさまざまなサポートを提供しています。
結婚準備やスピーチを手伝うサービスがある
Groomsman For Hireでは、ベストマン・スピーチの準備、衣装関係の調整、結婚式当日のスケジュール作成、バチェラーパーティーの計画、リハーサルディナーの調整など、新郎側で発生する作業を専門家が支えるプランを掲載しています。
この内容だけを見ると、「偽の友人」というより新郎専門のコンシェルジュやコーディネーターに近いサービスです。実際の友人たちは結婚式を楽しみ、面倒な調整をプロに任せるという使い方であれば、サービスとしての合理性も理解しやすいでしょう。
映画のような「潜入型グルームズマン」まである
さらに驚くのが、公式料金ページに掲載されている「Undercover Groomsman」です。Groomsman For Hireの料金ページでは、プロが実際のウェディングパーティーにグルームズマンとして入り、ほかのゲストには友人に見える形で裏方の問題解決やスケジュール管理を行うプランが案内されています。
2026年に確認できる掲載内容では、Undercover Groomsmanは1,500ドルからで、別途旅費などが必要とされています。料金やプランは変更される可能性があるため、利用時には公式サイトで最新情報を確認する必要があります。
「映画みたいに他人が友達として結婚式へ入るサービスなんて本当にあるの?」という疑問に対しては、現在は「実際にある」と答えられます。ただし、映画のBest Man, Inc.と同じ会社でも、サービス内容が完全に同一というわけでもありません。
プロのグルームズマンという求人まで確認できる
同社は利用者向けサービスだけでなく、「Professional Groomsman」として働く人材の募集ページも公開しています。整理力、社交性、信頼性などを備えた人材を募集し、ネットワークを拡大すると説明しています。
これを見る限り、「花婿付添人を職業として行う人」という存在も単なる言葉遊びではありません。ただし、一般的な職業分類として確立しているとまではいえず、一企業が提供する新しいウェディング関連サービスとして捉えるのが適切です。
映画との違いは「嘘をつくこと」が本質ではない点
映画では、ダグとジミーが架空の友情関係や過去をつくり上げ、家族に怪しまれないよう次々と嘘を重ねることがコメディの中心です。現実のプロサービスでは、それよりも結婚式の調整や新郎のサポートという実務的価値が前面に出ています。
潜入型のプランには映画に近い要素があるものの、サービス全体を「友達をレンタルして騙す仕事」と考えるのは正確ではありません。むしろ、新郎側の結婚準備に専門的なサポートを追加する仕事が発展し、その選択肢の一つとして匿名性の高い参加方法も用意されている、と考えるほうが実態に近いです。
なぜベストマンを雇いたい人がいるのか

日本の感覚では「結婚式のために友人役を雇う必要があるの?」と不思議に思うかもしれません。しかし、ベストマンやグルームズマンが結婚式の重要なメンバーとして認識されている文化では、新郎側の人間関係が目に見える形になりやすいという事情があります。
結婚式で求められる役割が多い
親友をベストマンに選べたとしても、その人がイベント企画、スピーチ、時間管理、グルームズマンへの連絡、当日のトラブル対応まで得意とは限りません。
そのため有料サービスには、「友達がいないから代わりを用意する」という需要だけでなく、「本当の友達にはゲストとして楽しんでもらい、面倒な実務は経験者に任せたい」という需要も考えられます。
映画では前者を極端にした設定ですが、現実のサービスとして考えると後者のほうが利用目的を理解しやすいでしょう。
友人の人数をそろえたいケースも考えられる
ブライズメイドやグルームズマンが並ぶスタイルの結婚式では、新婦側と新郎側の人数差が目立つことがあります。もちろん、本来は無理に同じ人数へそろえる必要はありません。しかし、写真や入退場の演出を重視するカップルほど人数を気にする可能性があります。
映画ではこの問題が極端な形で描かれ、新郎が一人のベストマンだけではなく複数のグルームズマンまで必要とします。現実では人数を減らす、親族に頼む、男女を問わず信頼できる人に依頼するといった方法もあるため、必ずプロを雇わなければならないわけではありません。
本当に必要なのは「友達の数」より信頼できるサポート
現在の結婚式では、伝統的な男女の役割に必ず従う必要はなくなっています。英国国教会も、ベストマンに女性を選ぶ「best woman」の例を紹介しており、決まったルールはないと説明しています。
そのため、映画のダグのように「男性の親友が一人いなければ結婚式が成立しない」と考える必要はありません。兄弟姉妹や親族など、性別にかかわらず信頼できる人に支えてもらう方法もあります。
日本の結婚式にもベストマンやグルームズマンはいる?

日本でもベストマンやグルームズマンを取り入れた結婚式はできます。ただし、欧米の結婚式と同じ役割が標準で用意されているわけではなく、会場スタッフが本来のベストマンに近い仕事を担当している場合があります。
日本では一般的な必須役ではない
日本のホテルや結婚式場では、介添人、ウェディングプランナー、キャプテン、司会者など複数のスタッフが式を支えます。そのため、新郎の友人が当日の進行まで幅広く担当しなくても結婚式を行えます。
一方で、海外風のウェディングを希望するカップルが、友人にブライズメイドやグルームズマンをお願いすることはあります。日本の結婚情報でも、アッシャーやグルームズマンを新郎の付添人、その代表をベストマンとして紹介する例があります。
取り入れるなら仕事内容を先に決めたほうがよい
日本で友人にベストマンをお願いするときは、名前だけ海外式にして役割を曖昧にするより、「挙式で新郎の横に立つ」「指輪を預かる」「ゲストを案内する」「披露宴でスピーチする」など、依頼したい仕事を具体的に決めておくほうがトラブルを防げます。
衣装代、交通費、リハーサル参加の有無なども事前に共有しておくことが大切です。海外の映画で見るほどベストマン文化が浸透していない日本では、依頼された側が仕事内容を知らない可能性も十分にあります。
映画を見たあとなら「役割」と「職業」を分けると理解しやすい
『ベストマン -シャイな花婿と壮大なる悪夢の2週間-』について最も混乱しやすいのは、ベストマンという言葉が「職業名」のように描かれている点でしょう。
実際には、ベストマンは本来結婚式における役割の名前です。一般的には新郎の親友や兄弟が無償で務めます。それとは別に、その仕事内容の一部または全部を有料で代行する「プロのグルームズマン」というサービスが現在存在しています。
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| ベストマンは本当にいる? | いる。英米圏などの結婚式で実在する伝統的な役割 |
| グルームズマンも本当にいる? | いる。複数の花婿付添人として新郎を支える |
| 普通はお金をもらう仕事? | いいえ。一般的には友人や兄弟などが務める役割 |
| プロとして雇えるサービスはある? | ある。新郎向けの有料グルームズマンサービスが実在する |
| 他人が友人のふりをするサービスもある? | 現在は潜入型グルームズマンを掲げる実在サービスを確認できる |
| 映画のBest Man, Inc.も実在する? | 映画に登場する会社は作品上の設定 |
| 日本の結婚式にも必要? | 必須ではない。希望すれば演出やサポート役として取り入れられる |
『ベストマン』の花婿付添人は実在し、プロのサービスまで本当にある
『ベストマン -シャイな花婿と壮大なる悪夢の2週間-』に登場するベストマンやグルームズマンは、映画だけの架空の役割ではありません。英米圏などでは、新郎の親友や兄弟がベストマンを務め、そのほかのグルームズマンと一緒に結婚準備や式当日のサポートをする文化があります。
一方、映画の「Best Man, Inc.」は作品上の会社であり、伝統的なベストマンが通常から有料の職業だったわけではありません。しかし現在は、結婚準備、スピーチ、バチェラーパーティー、当日の調整などを請け負うプロのグルームズマンが実際に存在し、ゲストには友人として見える形で参加する潜入型サービスまで確認できます。
つまり「花婿付添人は本当にあるのか」という疑問への答えは「ある」。そして「映画のようにプロを雇う仕事まであるのか」という疑問についても、現在では「実在するサービスがある」が答えです。ただし映画ほど一般的な職業ではなく、本来のベストマンは大切な友人や家族が新郎を支えるための役割だと理解しておくと、作品の設定と現実の違いがわかりやすくなります。



